編み物の世界で避けては通れないのが「編み図」です。一見複雑に見えるこの図面のような存在は、実は編み物をする上での心強い味方なのです。まずは編み図について、基本的なところから一緒に見ていきましょう。
編み物を始めたばかりの頃、誰もが一度は編み図に戸惑った経験があるのではないでしょうか。丸や四角、バツ印のような記号がたくさん並んでいて、まるで暗号のように見えることもあります。一方で、実はこれらの記号には、すべて意味があり、私たちの編み物作りをサポートしてくれる大切な情報が詰まっているのです。 編み図は、いわば編み物の設計図です。家を建てる時に設計図が必要なように、素敵な編み物作品を作るためには、編み図を理解することが欠かせません。最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な記号の意味さえ覚えてしまえば、誰でも読めるようになります。 実は、多くの方が「編み図が読めない」という悩みを抱えています。特に初心者の方は、記号の意味が分からない、編む順序が理解できない、目数の数え方が分からないなど、様々な壁にぶつかります。しかし、これはごく自然なことなのです。
編み図には、作品を完成させるために必要な情報がぎっしりと詰まっています。大きさや形はもちろん、使う毛糸の量や道具のサイズまで、様々な情報を読み取ることができます。これらの情報は、私たちの編み物作りを正確に導いてくれる道しるべとなります。
まず、編み図から読み取れる最も基本的な情報は、完成品の大きさと形です。例えば、マフラーを編む場合、長さと幅が何センチになるのか、どんな形に仕上がるのかが一目で分かります。これにより、自分の理想とするサイズの作品を作ることができます。
また、編み図には必要な毛糸の量も記載されています。毛糸は玉数や重さで表示されることが多く、作品を始める前に必要な材料をしっかりと準備することができます。使う道具についても、かぎ針や棒針のサイズが明記されているので、適切な道具を選ぶことができます。
編み図には大きく分けて二種類あります。一つは「詳細編み図」で、もう一つは「簡易編み図」です。 詳細編み図は、一目一目の編み方が細かく記載されているため、初心者の方でも分かりやすいのが特徴です。一方、簡易編み図は、ある程度編み物に慣れた方向けに、必要最小限の情報だけをコンパクトにまとめたものです。 編み図を見るときには、いくつかの基本的な約束事があります。例えば、編み図は通常、作品を表側から見た図として描かれています。また、編む方向を示す矢印や、目数を表す数字なども決まった位置に配置されています。これらの約束事を知っておくことで、編み図をより正確に理解できます。 このように、編み図は単なる記号の羅列ではなく、作品作りに必要な情報が整理されて詰まった、とても便利なガイドなのです。
編み図を前にして、「どこから手をつけていいのか分からない」という声をよく耳にします。確かに、初めて編み図を見る時は戸惑うかもしれません。しかし、読み方には決まりがあります。その基本的なルールを理解すれば、編み図を読むのは決して難しいことではありません。
まず、編み始めの位置を見つけることから始めましょう。編み図の多くは下から上に向かって編んでいきますが、円形や四角形の作品の場合は、中心から編み始めることもあります。編み始めの位置は、通常、矢印や「スタート」という文字で示されています。 例えば、マフラーやストールのような長方形の作品の場合、一般的に下の端から編み始めます。この時、作り目の数がはっきりと示されているので、それに従って編み始めの鎖編みを作ります。中心から編み始める場合は、輪を作って始めるので、その方法も編み図に記載されています。
矢印は編み図の中でも特に重要な要素です。矢印は編む方向を教えてくれますが、これは表側から見た場合の方向を示しています。基本的な編み物では、奇数段は右から左へ、偶数段は左から右へと編んでいきます。輪編みの場合は常に同じ方向(通常は右から左)に編みます。
段数と目数のカウントも、編み図を読む上で欠かせないポイントです。段数は通常、編み図の左側や右側に数字で示されています。1段、2段と順番に数えていけば、今どの段を編んでいるのかが分かります。目数は各段の終わりに記載されており、その段で編むべき目の数を教えてくれます。
表と裏の見分けも大切です。編み図は基本的に表側から見た図として描かれています。例えば、細編みを裏から見ると少し違って見えますが、編み図は表から見た時の状態を示しています。この知識は、特に模様編みをする時に重要になってきます。
編み図を構成する様々な記号の中でも、特に重要なのが基本的な編み目を表す記号です。これらの記号は、編み物の土台となる大切な要素です。ここでは、最も基本的な四つの編み方とその記号について詳しく説明していきます。
まずは鎖編み目から見ていきましょう。鎖編み目は編み物の基礎となる技法で、多くの作品で最初に使われます。ほとんどの場合、作品の土台として鎖編みから始めるため、この技法は避けて通れません。 鎖編み目の基本的な編み方は以下の通りです。 1.かぎ針に輪を作ります 2.針に糸をかけます 3.かけた糸を輪の中に引き出します 4.できた新しい輪を適度な強さに調整します 5.2から4を必要な数だけ繰り返します 鎖編み目は、編み図では楕円形や丸い形の記号で表されます。この記号を見たら、「ここで鎖編みをするんだな」と理解できるようになりましょう。鎖編みは比較的簡単な技法ですが、きれいな編み目を作るためには、糸の張り加減が重要になってきます。強すぎても緩すぎても、きれいな編み目にはなりません。
次に細編み目についてです。細編み目は、しっかりとした編み地を作るための基本的な編み方です。鎖編みの次に覚えることが多い技法で、多くの作品で使用されます。 細編み目は編み図では「×」や「+」の記号で表されます。この記号を見かけたら細編みをする場所だと覚えておきましょう。細編みの手順は以下の通りです。 1.指定された編み目に針を入れます 2.糸をかけて引き出します 3.2本の輪ができた状態で、もう一度糸をかけます 4.すべての輪に通して引き出します 5.編み目が完成します 細編み目の大切なポイントは「立ち上がり」です。新しい段を始める時は、必ず鎖編み1目分の立ち上がりを作ってから編み始めます。この立ち上がりを忘れてしまうと、端が波打ったような不格好な仕上がりになってしまいます。
続いて、長編みについて説明しましょう。長編みは細編みよりも高さのある編み目で、サクサクと編み進めることができる技法です。作品に高さや柔らかさが必要な時によく使われます。長編みの手順は以下の通りです。 1.針に糸を2回巻きます 2.指定された編み目に針を入れます 3.糸をかけて引き出します 4.2本の輪に糸を通します 5.残りの輪にも順番に通していきます 長編みは編み図では「T」の字のような形の記号で表されます。長編みを始める時は、鎖編み3目分の立ち上がりが必要です。これは長編みの高さに合わせるためです。
最後に引き抜き編みについて見ていきましょう。引き抜き編みは編み目と編み目をつなぐ時や、縁かがりに使われる技法です。手順は以下の通りです。 1.編み目に針を入れます 2.糸をかけて引き出します 3.そのまま次の編み目に入れます 4.もう一度引き出して完成です 引き抜き編みは編み図では黒く塗りつぶされた丸や楕円形で表されます。シンプルな技法ですが、縁をすっきりと仕上げたり、パーツをつないだりする時に重宝します。
基本的な編み方をマスターしたら、次は少し発展的な技法にチャレンジしてみましょう。ここでは、作品の形を自由に変えたり、素敵な模様を作ったりするための技法を紹介します。
形を自由に変えるために必要なのが、増し目と減らし目です。増し目は1つの編み目から2つ以上の編み目を作る技法で、編み地を広げたい時に使います。例えば、帽子やバッグを編む時、上に行くほど大きく広がっていく形を作るために増し目を使います。 同じ編み目で増し目をする場合は、その場所を示す特別な記号が使われます。一般的には、1つの記号から複数の線が出ているような形で表されます。場所によって増やし方が違う場合は、それぞれの編み方を示す補足説明が付いていることもあります。 一方、減らし目は2つ以上の編み目を1つにまとめる技法です。例えば、セーターの肩の部分や、帽子の頭頂部分を狭めていく時に使います。減らし目は編み図では、複数の線が1つの記号に集まってくるような形で表されることが多いです。
模様編みに挑戦する時も、編み図は大きな味方になります。レース編みやケーブル編みなど、複雑な模様もすべて記号で表現されています。模様の繰り返しの単位や、色の変え方なども編み図から読み取ることができます。 例えば、レース編みで透かし模様を作る場合、長編みと鎖編みを組み合わせて模様を作ります。この場合の編み図では、長編みの記号と鎖編みの記号が規則的に並んでおり、どこでどの編み方をすればよいのかが一目で分かります。 また、特殊な編み方の記号も覚えておくと便利です。玉編みやピコット編みなどの装飾的な編み方は、作品に立体感や華やかさを加えてくれます。これらの技法を使いこなせるようになると、より魅力的な作品作りが可能になります。
編み図の読み方が分かってきたら、いよいよ実際の作品作りに挑戦です。しかし、せっかく編んだ作品が思い通りの仕上がりにならないこともあります。ここでは、失敗を防ぐための大切なポイントをお伝えします。
まず重要なのが、自分のレベルに合った編み図を選ぶことです。編み図を見たときに、使われている技法のほとんどが理解できる、という状態が理想的です。難しすぎる編み図に挑戦すると、途中で挫折してしまう可能性が高くなります。 編み図選びのポイントとして、以下の項目をチェックしましょう。 1.基本的な編み方(鎖編み、細編み、長編みなど)で構成されているか 2.特殊な技法が多用されていないか 3.模様の繰り返しが分かりやすいか 4.サイズ調整が必要な箇所が少ないか 5.編み図に補足説明がついているか 初めは小物類から始めるのがおすすめです。コースターやポーチなど、比較的短時間で完成する作品なら、モチベーションを保ちやすいですし、編み図の読み方の練習にもなります。
次に大切なのが、ぴったりのサイズに仕上げるためのゲージ作りです。ゲージとは、一定の編み目数と段数で作る正方形のサンプルのことです。このサンプルを作ることで、自分の編み方と編み図が示すサイズの違いを知ることができます。 例えば、10センチ四方のゲージを編んでみて、編み目数や段数が編み図と異なる場合は、使う道具のサイズを変えたり、編み方を調整したりする必要があります。これは面倒に感じるかもしれませんが、理想のサイズに仕上げるために欠かせない工程です。 また、編み物をしていると様々なトラブルに遭遇します。よくあるのが、目飛びや編み目の不揃い、段数が合わないなどの問題です。これらは、以下のような原因が考えられます。 ・糸の張り加減が不適切 ・編み目を数え間違えている ・立ち上がりの目数を間違えている ・増し目・減らし目の位置を間違えている ・編み図の読み方を誤解している これらの問題に気づいたら、すぐに修正することが大切です。編み進めてから気づくと、解くのが大変になってしまいます。定期的に編み目の数を確認したり、できあがりの形をチェックしたりする習慣をつけましょう。
編み図の基本が分かってきたら、少しずつ難しい作品にチャレンジしていきましょう。でも、いきなり複雑な作品に挑戦するのではなく、段階を踏んで着実にスキルアップしていくのがコツです。 最初に作る作品として特におすすめなのが、コースターやマフラー、シンプルなポーチです。これらの作品は、基本的な編み方だけで完成させることができ、サイズも自由に変えられます。しかも、日常的に使える実用的なアイテムなので、作る楽しみも倍増です。 例えば、初めてのコースター作りでは、以下のような手順で進めます。 1.鎖編みで基礎を作る 2.細編みで形を整える 3.引き抜き編みで縁を仕上げる 4.糸始末をして完成 コースター作りを通じて、編み図の読み方や基本的な編み方を実践的に学ぶことができます。さらに、編み図が読めるようになるためには、実際に手を動かして練習することが大切です。 編み図の練習方法として効果的なのが、記号を書き写す作業です。編み図をノートに描き写してみると、記号の意味や配置の規則性が理解しやすくなります。また、実際に編んでみて、でき上がりと照らし合わせることで、より深い理解が得られます。 中級者へのステップアップを目指す場合は、徐々に新しい技法を取り入れていきましょう。例えば、模様編みやケーブル編みなど、装飾的な技法を一つずつ習得していくのです。この時も、小さな作品から始めて、成功体験を積み重ねていくことが大切です。
ここまで、編み図の基本から応用まで、幅広く解説してきました。すべての内容を一度に完璧に理解する必要はありません。大切なのは、自分のペースで着実に前進していくことです。
編み図をマスターするためのポイントは、基本をしっかりと押さえることです。鎖編み、細編み、長編みといった基本の編み方と、それらを表す記号の意味を確実に理解しましょう。そして、実際に編む練習を重ねることで、徐々に難しい技法にも挑戦できるようになります。 編み物は、決して急いで上達する必要はありません。むしろ、ゆっくりと時間をかけて、一つ一つの作品を丁寧に作り上げていく過程を楽しむことが大切です。失敗も成功も、すべてが次の作品への糧となります。
楽しみながら続けていくためには、同じ趣味を持つ仲間との交流も大切です。編み物教室に通ったり、オンラインコミュニティに参加したりすることで、新しい技法や情報を得ることができます。また、困ったときに相談できる仲間がいることは、大きな心の支えになります。 編み物の世界には、まだまだ学べることがたくさんあります。この記事を読んだ皆さんも、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
編み物の技術と知識をさらに深めたい方には、手編みニットデザイナー資格の取得がおすすめです。この資格は、編み物に関する総合的な知識と技術を持っていることを証明する資格で、特に受験資格を必要としないため、誰でもチャレンジできます。 試験では、編み物の基本知識から実践的なスキルまで、幅広い内容が問われます。具体的には、 ・編み物の種類や基本道具 ・道具のメンテナンス方法 ・毛糸の種類と選び方 ・作品の基本と仕上げ方 そして編み図の見方などが試験範囲となります。 資格取得後は、自宅やカルチャースクールでの講師活動も可能となり、編み物の知識と技術を活かした新しいキャリアを築くチャンスが広がります。合格基準は70%以上と設定されており、しっかりと準備をすれば十分に達成可能な目標です。 資格取得を目指す方のために、SARAスクールジャパンや諒設計アーキテクトラーニングなどの認定講座も用意されています。これらの講座では、資格試験に向けた体系的な学習が可能で、通信教育形式で自分のペースで学ぶことができます。編み物の技術を磨きながら、プロとしての第一歩を踏み出してみませんか。
編み図は、最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な記号の意味と読み方を理解すれば、誰でも使いこなせるツールです。この記事で学んだ基礎知識を活かして、まずは簡単な作品から始めてみましょう。そして、徐々にレベルアップしながら、自分だけの素敵な作品作りを楽しんでいってください。編み物の世界には、まだまだ素晴らしい発見がたくさん待っています。編み図を味方につけて、編み物創作を精一杯楽しみましょう!